婆さんを車イスに座らせ
施設のご近所の総合病院まで
押して連れていく
紹介状を片手にもち
神経内科の先生に診てもらうのだ
診察室では
婆さんとドクターとの話は全く噛み合わず
婆さんは歩けませんの一点張り
触診にてボディチェックする段には
歩けませんのに
高めの診察台にあっさりよじ登れる
ドクターの
「上がれてるやん」という呟きは
婆さんには聞こえてはいない
病院についた頃にはトイレも
歩いて行ったのに
診察が進むにつれ
立つ事すら無理だと訴える
ドクターが聞き入れず
色々と身体を動かす指示を出すと
婆さん本来の真面目さからか
無理だと言いつつ
言われた通りの動作をやってのけてしまう
勿論、顔は苦痛で歪み放しだ
結論は
糖尿病で末梢神経障害はある
腰の坐骨神経痛もある
だが、歩けない程の大きな病気はなし!
メンタルでしょうね
やっぱりね
それでも婆さん
「治りませんのか?薬は?」
婆さん今の話を聞いてないのか?
周りに対して盲目である
診察代120円也
ほんと日本は優しい国だ
どっと疲れた
施設に戻ると施設長から入居の話が出た
婆さんはとりあえず
ショートでここを利用している
その方が費用面で抑えられるからだ
建ったばかりの施設では
入居者で部屋が埋まるまでは
ショートスティの利用者で空き部屋を
埋める
経営的な面でそうしているのだが
入居者が増えていくと安定的な利益が得られるので
ショートスティは無くなるのだ
そうかついに入居か
私が生まれ育った実家
先週辺りから賃貸と売りと両方で出してる
家の鍵も不動産屋に預けてある
施設の駐車場から不動産屋に電話してみる
担当のアラサー女子社員が
若々しい声で
「それが直ぐに反響がありまして
買主さんが真剣に検討されておられます」
あのゴミ屋敷並に散らかったままの家の
内覧も済ませたらしい
あーもう、今更片付けなくてもええか
あっ、家、売れちゃうんだ
とにわかに寂しさがこみ上げる
そのまま
電車に乗り梅田へ
ルクアでランチ
飲茶が食べたかったけど
ルクアより阪急百貨店の飲茶がいいかな
サラバ!
婆さん77歳、私52歳
私を産んでくれた52年前のお母ちゃんは
今は自分の事で頭が一杯の婆さんとなり
そして私が育ったあの家も
もう直ぐ人手に渡るであろう
サラバ!私の故郷
泣けてくるぜっ‼︎






