盛岡食いしん爺日記
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午前10時過ぎ、歯科医で抜歯。
長いこと使い続けてきた親知らずだった奥歯。
とうとう右に左にぐらぐら。
若い頃から通い続けている歯科医院。
親知らず働かせてきたのも私の飲む薬も知っている。
スタッフも変わらない。
長年通う人が多いのも頷ける。
きっと街でマスク姿でも、
私の顔より歯並びや口の中の様子が浮ぶのではないだろうか。
歯の点検掃除の後、あっという間に抜歯は終わった。
抜けた歯を見ながら先生の説明。
役目を果たした奥歯は疲れ切っていて、
ほっとしている様に見えた。
帰ってから、少し昼寝をして2時半。
麻酔も切れたが全く痛みもなく空腹だ。
しばらく食べていない支那麺処「はすの屋」へ行こう。
Lujon - Dan Fontaine & His Orchestra (Henry Mancini)
店の戸を引く時、
すでに中の様子と奥さんの顔が浮かんでいる。
カウンター席だけの店。
食べ終わったお客さんとすれ違いだった。
「あら、いらっしゃい」と微笑む奥さんは元気そうだ。
「ちょうど今日から紫蘇ジュースを始めました」
酸味と紫蘇の風味。
暑くなると始まるサービス。
「お元気でしたか?」
「午前中に歯医者で抜歯してきました」
「あらら、そうですか」
支那麺の食券をテーブルに置いた。
「はい、ありがとうございます。」
と厨房へ入った。
ほどなく出てきた「支那麺」。
鼻をくすぐる出汁のいい匂い。
まず視覚と臭覚で味わう。
無駄な物が一切ない中華そば。
それだけに妥協しない食材選びと手間がかかっている。
透きとおったスープ。
雑味のない味。
美味しい。
私の味覚が感激。
ご飯にかけても餃子を浮かべても美味しそうだ。
すっきりして喉に残らない。
チャーシューは、箸で触れるだけで千切れる感じ。
口の中でほろりと溶け、脂の甘味と肉の旨味を楽しむ。
かんすいを使わない麺。
これが美味しい!
するりと喉を越え、いつの間にか胃に収まる。
前より美味しくなった気がして、言ってみた。
「なんか、とても麺が美味しい」
「ありがとうございます。でも前と同じですよ」
と微笑む。
もう箸が止まらない。
「あっ!」と奥さんの顔を見た。
「抜歯したのを忘れてました」
二人で大笑い。
原則取材お断りの店だが、
「もりおかじまん」という本に掲載させていただいた。
突然、訪れお願いした。
本人を写さないことで特別に了解してもらった。
今でもテレビには一切出ていない。
一昨年、人気のタレントさんが、食べに来た。
それをラジオで話したら、その後SNSでもバズり、
連日、大行列だつた。
しばらく余波が続いた。
奥さんは勿論のこと1年ぐらい常連さんも苦労した。
今は少し落ち着いてきた様だ。
たいていテレビなどは一過性で台風の様に平穏な日々が戻るが、
「はすの屋」は、かなり長引いた。
こってり系のラーメンが隆盛の中、
あっさり系でも若い人も多く並んだ。
開店してもうかれこれ30年近いだろう。
あっさりでも深いコクありスープをいつも飲み干してしまう
盛岡市「はすの屋」の支那麺。
今日も美味しく食べ、もっと食べたいと思った。
私が歯医者の話をしたので麺をやわらかめにしようかと思ったそうだ。
でも久し振りに来たから、いつもの様に作ったと言う。
肩を痛めリハビリ中だと言うと、
ここのワンちゃんも首のあたりに炎症を抱えてしまい、
今は散歩できないそうだ。
早く元気になって欲しいものだ。
お客さんも途切れた時間で奥さんとも色々話すこともできた。
はすの屋は、一畳ほどもある大きな濃紺の暖簾が下がるのが営業中の印。
スープが無くなると終わりだが、4時近くまで開いている。
ランチを食べそこねた時でも
美味しい支那そばが食べられるのでとてもありがたい。
店の前の歩道にラベンダー。
近づくといい香り。
安心して抜歯して、ゆっくり体に優しい支那そば。
長い間に多くの人と様々な関係で繋がっている。
とてもありがたいことで大切にしたいと思う。
外へ出ると盛岡の街が一層輝いて見えた。
盛岡市紺屋町
支那麺処「はすの屋」













