裏の長屋に住むおじちゃんが焚く
お風呂の薪の匂いが、好きでした。
「 若い頃、ヤンチャして
背中にホリモノがあるから
お風呂やさんには
行けないんだって。」
「 もとは腕のいい大工だったけど
酒とバクチで身を持ち崩してねぇ」
「 だから、お風呂小屋を
つくらせてほしい、って
奥さんが言ってきたの。
"奥さん"って、言っても
" ナイエン " だけどね。」
「 タバコのやりすぎで
肺も真っクロだから、
そのうち、血ヘドを吐いて
死ぬことになるだろうって
お医者に言われたらしい。」
「 クスリに手を出さなかった
のだけは、賢かったよねぇ…」
そんな話を
当時まだ小学生だった私に
語って聞かせていた、母。
実家が管理していた、
一間きりの狭い長屋には
おじちゃん夫婦の他にも
一日中賭け事をしていた、母曰く
『 ヤクザもん 』の、若い衆など
ワケアリな方達が住んでいました。
「 お医者が嫌いでさ、
" 死ぬときくらい
好きにさせろ " って
病院に行かないらしい。」
母からそんな風に聞いてのち
さほど長い時を経ないうちに
洗面器いっぱいの血を吐き
亡くなった、おじちゃん。
「 だから、偉い人の言うことは
きいておいたら良かったのに… 」
内縁の妻であったおばちゃんは
母にそう、嘆いていたようです。
おじちゃん。
おばちゃんのために
「 あと少し生きよう 」
とは、出来なかった?
死ぬも生きるも自分の勝手
なのかも、しれないけれど…
生きたくても生きられなかった命
に思いを巡らすことが増える、夏。
『黒い雨訴訟』で国がやっと
上告を断念したとのニュース。
ほっとしました。
長すぎましたよね…
そして、不安な台風。
特に東北地方への影響が心配。
大きな被害が出ませんように…



