子どもが描く人の顔は大抵が
にっこりとして、笑っている。
だが、彼女が描いた人の目は
真っ黒く曖昧な形をしていて
まるで、ホラー漫画に出て
くる、化け物のようだった。
4歳まで、ろくな食べ物も
与えられずに殴られて育ち
その為か、嚥下機能が弱く
食べ物を咀嚼し、飲み込むのに
時間がかかり、好き嫌いも多い。
そんな彼女に、担任教師は
「 はい、あ〜んして。
もぐもぐもぐ。」と
口にグイッとスプーンを突っ込み、
給食を無理矢理に食べさせていた。
…それ、虐待じゃないの?
上に報告して止めさせる
べきか?と、逡巡したが
しかし次第に、子どもの方が
嫌いなおかずは、牛乳で
流し込んではいたものの
徐々に、自ら、給食をすべて食べて
おかわりもするようになっていった。
こうしたことが度々起こるから、
教師は強制を止めないのだろう。
彼女の描く絵は、色使いも
黒や灰色、茶色などの
暗い色が多かったので
「 子どもらしくない!」と
担任はご不満で、それに対し
キレる一歩手前の私だったが
美術が専門の、図工主任が
「 これはこれでいい。」
と言ってくれて助けられた。
専科の人間に言われれば、
黙る人は多いので。(笑)
虐待の後遺症か、もともとの
気性であったのか、とにかく
何かと激しかった彼女。
時に暴れる彼女と格闘しながら
過ごした、1年生も終わりの頃。
彼女が描いた、鳥の絵を見た。
ピンクや、赤の花々に囲まれて
黄色とオレンジ色の羽根
をした鳥が、笑っている。
明るくて、暖かな絵だった。
はたしてこの子は、どうなっていた
ことかと思わせる子は、確実にいて。
親が無くても、確かに子は
育つだろう、とは思うけど
でも代わりになる、安全な
❛ 居場所 ❜ は必要であろう。
本来、学校は
そうした役割りを持ち得る
存在なのだ、ということを
あの時の、彼女の鮮やかな絵が
改めて伝えてくれていたような
そんな気が、今でもしています。


